第5例
安◯某女 47歳
数年前から胃に発作性の痙攣があり、つねに注射で治しているという。ところが最近、その発作がひどくなってきており全身の栄養状態もしだいに衰え、ついに癌ではないかと疑われ川井氏X線部でその真偽を診察してもらってきた。すると意外にも胸部に大動脈瘤がみつかり、胃の症状もこれのせいだろうと当院を紹介された。
はじめX線室において診断を受けるときも患者は衰弱しているため目眩をおこすので瞬間的な照射のみで検査したらしい。
現症。胸部の打診や聴診では異常は認められない。心窩部において胃の部分に抵抗と圧痛があり、一般に衰弱いちじるしい。
治療。打療を施すこと5日におよんで疼痛はまったくなくなり、胸部圧迫感および嘔吐もとまり、食欲は増進した。胃部の圧痛や抵抗感も消失し、3週あまりで栄養状態も回復、元気に退院した。
大正5年5月