第二 脊椎筋の攣縮
臨床家は炎症をおこした関節や漿液膜などを保護する作用として、その周囲の組織やこれを覆う筋肉が緊張することは知っているけれども、脊椎筋の攣縮にかぎってはあまり注意を払っていないようである。
この脊椎筋の攣縮を診察するには、まず患者を横臥させて背筋を弛緩させなければならない。そして試しに脊椎神経の起根部を強く圧迫してみる。すると末梢の一定部位の筋肉が攣縮するのがみられる。またこれに反して、末梢の一疾病による末梢の筋肉の攣縮は脊椎筋の攣縮に伴わないこともあるが、注意して触診してみればたいてい両方に攣縮が起こっている。
このように脊椎側またはまたは末梢の圧迫により反射収縮を起こすわけだが、ときとして脊椎筋上では広い範囲で収縮してしまっていて局部を限局することが難しいことがある。しかし注意して触診すれば、たんに振動しているものや拍動しているものかは了解できるものである。
脊椎の一側に強圧を加えるときは、ときとして末梢の両側に筋肉収縮をみることがある。また、末梢の一側に圧迫をくわえたときは脊椎の両側筋肉に攣縮をおこすことがある。あるいはたんに皮膚上の刺激のみで脊椎筋の収縮反射を起こすこともあるが、末梢の筋肉や疼痛のある部位を圧迫したときのように顕著にはでない。
このような現象は診断上たいへん役に立つもので、たとえば化膿性中耳炎で頚筋が強直しているものを、脳膜炎が起こっているのではないかと疑うことができる。