第11例
小◯某女 52歳
一ヶ月前から液体を飲み込む際に食道に一種の雑音が聴こえるようになった。そして固形物は飲み込むときに胸骨柄の後方に痛みがある。それ以来、粥しか食べられないらしい。
X線所見としては、下行大動脈瘤。
治療。数日にわたる打療によって嚥下の際の雑音は消えた。10日で疼痛も緩解し、全身の栄養も回復し今なお治療中。
大正6年2月
(以上列記したもののほか、4例において汽車、自動車などで旅行し、いちじるしい呼吸困難を感じるようになったものがみられる。しかしその徴候増悪は胸椎下端の圧迫または心動によって大動脈瘤拡張反射をおこしたことによるもので、その部分を圧迫を避ければ予防することができる。かつてアメリカ人で自動車に乗るといちじるしい呼吸困難をおこす人がいて、X線で透かしてみてみると大動脈瘤が発見された。エブラム氏の忠告で、それ以来大きな自動車に乗るようにしたところ、発作は起こらないようになったという適例がある。)