第四 血管運動装置
血管壁は動脈、静脈および毛細血管にいたるまで血管収縮神経および血管拡張神経の支配を受けていて、おもに小動脈に作用する。ためしに収縮神経を刺激してみると小動脈の収縮がおこり血行の抵抗が増して血圧が上昇する。反対に拡張神経を刺激すると逆の結果がおこる。
腹部内臓は血管神経の分布に富み、たくさんの血液供給を受けており、全身の血圧に大きく影響している。
健康時においては血管神経は自律的に各部を調節して、必要に応じて適量の沓駅供給を授け、一部の活動が盛んになっているときは、そこの血管は拡張して多量の血液を送り、同時に別の場所の血管は収縮して、相互に全身血圧の平衡をたもっている。
末梢刺激により反射的に血管は収縮または拡張するものであって、片方の腕を冷水につけると反対側の手指の温度は下降することが観察される。なお、肺炎患者の患側の頬まで紅潮するというようなこともこの例である。
血管運動反射は知覚神経の刺激により脊髄後根から脊髄に入り、中枢を刺激して収縮または拡張神経を興奮させるものであり、その反射中枢はクラーク柱であろうと言われている。
血管収縮神経の中枢は延髄で、頚部および腰部の下端をのぞいて全脊髄を通じて副中枢がある。下に血管収縮神経細胞に脊髄節における配置を示す。
分布 | 起源 |
脳、顔面、頭蓋、口腔、唾液腺、鼻粘膜、耳、目 | 第2、3、4胸髄節 |
食道、胃 | 第4〜9胸髄節 |
小腸 | 第6胸髄〜第2腰髄節 |
肝臓 | 第6胸髄〜第1腰髄節 |
脾臓、膵臓、副腎 | 第8〜12胸髄節 |
大腸 | 第11胸髄〜第2腰髄節 |
膀胱、子宮、外陰部、卵巣、睾丸、前立腺 | 第6胸髄〜第2腰髄節 |
血管拡張神経は収縮神経に比べて次のような特徴がある。
- 刺激に反応する時間が長い
- 拡張しきるまでの時間が長い
- 継続時間も長い
- 拡張神経は収縮神経のように持続的な興奮状態にあるわけではなく、たんに臓器の機能が盛んなときにだけその作用をあらわす。あたかも陰茎の勃起のようなものである。
血管拡張神経細胞は脳、頭蓋、顔面、眼および口腔など、おもに脳神経核にある。