打診上の価値はすでに述べたように、以下、胃の運動力および疼痛の位置の診断について述べる。
〔胃の運動力の試験〕
迷走内臓検査法によって胃の下縁を打診し、次に半月形部強打すると、その下縁は退縮(第34図のAからBへ)し、これによって胃壁の運動力を知ることができ、そしてその差は通常2cmから4cmにおよぶ。
〔疼痛の試験〕
上腹部に疼痛または圧痛点があって、それが胃に関するものなのかどうか知るためには、強く半月形部を打つとわかる。胃壁に問題があるときには、胃壁が収縮するのでX1からX2へ昇る。しかしそれは、1分もしないうちにふたたびX1に戻る。
胃の腫瘍。胃の収縮反射を喚起すると、腫瘍は上方へ移動し、T11を強打すると胃はすみやかに拡張して下方に移動する。ただし十二指腸潰瘍の場合には疼痛部位の移動はおこらない。
胃アトニー症。多い例ではないが、はなはだしいものにおいては迷走神経を亢進させてもなんら反射現象をおこさないものがある。