マラリアによって肥大していた脾臓が、エーテル噴霧二よって収縮し治癒したとするアダモ-モスクシ氏の説は誤りである。それは皮膚の刺激によって肺の拡張をきたし、脾臓面を覆って濁音部を減少させたからである。
脾臓は細菌が潜伏する好臓器であって、マラリアのプラスモジュームは血行中においてはことごとく死滅しているが、脾臓においてのみ潜伏する。(ラベラン)したがってこれに収縮反射をおこさせると、潜伏していたマラリアプラスモジュームは再び血液中に現れる。ながらく発作をおこしていなかったマラリア患者がキニーネ服用によって再発してしまうのは、おなじく脾臓の収縮反射に因るものである。
ホメオパシー派のハイネマンはみずからマラリアに罹患し、ひさしく発作がなかったので根治したものと思い、ためしにキニーネを飲んでもたところ、たちまち悪寒旋律が走り、ついで高熱、発汗、分離(遠心分離機での検査のことか?)などのあきらかなマラリア発作を起こしたという。これは同氏一派の治療法である「一定の薬品の服用によってある症候を現すときは、その薬は、同一症候をあらわす疾病に向かってこれを治す力がある」という説に符合するものとして、キニーネの服用によって先にあげた症候をあらわしたので、キニーネは同一症候であるマラリアを治す特攻があると主張するが、これはキニーネの服用によって脾臓の収縮をきたし、潜伏したマラリアプラスモジュームは血中に駆逐されて、マラリアの症状を再発したものでしかない。
エブラム氏はL1、2、3、を叩打して脾臓の収縮を引き起こし、マラリアの診断および治療に応用された。すなわち、この収縮反射作用によってマラリアの症状を再発させて、血中においてマラリアプラスモジュームをみることができた。治療法としては頑固なマラリアでキニーネのみに応じないものは、打療法とあわせてキニーネを服用させることでたびたび全治させた。なおマラリア性の脾臓肥大は数週間の打療法によって収縮させることができる。
脾臓の肥大をおこすどのような慢性疾病に対してもこの療法を試してみること。バンチ病に対しても対症療法として好成績を得た例があるという。