第三 脊椎痛
脊椎痛はいろいろな方法で検出することができる。
一 脊椎を指頭で圧するか、または打診板もしくは打検槌で叩打するときは疼痛を感じる。もし感じないときは側方または下方に脊椎を圧すると感じることがある。
二 脊椎の両側に沿って脊髄神経の起根部を圧すると痛みを感じる。
三 頭上から鉛直に脊柱を圧下し、ついで肩上から圧下してみる。
四 脊椎横突起上に、回転するように強い圧迫を加えると故障した関節に痛みを感じる。
五 不快を感じない程度の湯に浸した海綿で、脊柱を上下にこすってみると、異常のある脊椎は疼痛を感じる。これの多くは脊髄炎を始め特殊な疾病を診断するときに使う。
六 CあるいはAの音叉をどの脊椎にあてても、健康体であれば振動を感じるだけであり、脊髄癆の場合は皮膚や骨の知覚が脱失してしまっていてそれすら感じない。しかしときとしてその初期であればかえって知覚過敏となって灼熱感を感じることがある。そのほか、ヒステリーであれば音叉を触れたときに骨や皮膚に知覚が消失することがある。
七 ファラデーのコイルを使う方法もある。このコイルは使用前にガイスレル管で試験し、その管のなかで発光する強さがあれば充分透入する力がある。そしてその一極を上腹部に貼り、もう一方の極で脊柱を上下に7、8回こすってみれば、ある部分は発赤し、時間が経つにしたがってようやく紅潮する。ここが知覚過敏になっている場所で、指頭でここを圧したら疼痛を感じる。これは一定の疾病がある徴である。
八 ガルバニー電流を脊椎に試みるときは、過敏なところでとくに感受する。
九 しばしば冷たい風にあたった患者が頭部や胸部に疼痛を感じるのとおなじように、空気ポンプで脊椎に冷たい風をあててみると、同じような疼痛を末梢に引き起こす。このようにして疼痛点を発見したときはそこに硝酸銀で徴をつけておいて、後日、治療に役立てる。