第二 脊髄反射機能を興奮させる方法
脊髄には内臓を収縮、または拡張させる二種の中枢があり、たがいに拮抗/対立し、そのことで我々の健康を保っている。しかしそのいずれか反射機能の平衡を失ったときはここに病的症候として現れ始めるものである。
脊髄の各部は脳髄から反射抑制神経を受けており、そのために抑制神経が刺激されているときは反射機能がいちじるしく亢進する。なので臨床上一反射が病的に亢進するときは反対であるほかの反射機能を鼓舞したとしても、健康成人のような現象をみることはできない。ここから推測すると、もし我々が一時的に一反射機能を奪取することができれば反対反射は普通より著明にその機能を現出させるということになる。この試験に際して圧迫法は30秒を超えないときは刺激となり、1分を超えるときは反射機能を奪取するものと覚えておこう。今ここに一二の試験をあげれば、
(喘息における試験)健康成人においてT3、4間を圧迫して迷走神経の張力を減弱させてしまえば肺は収縮してその下縁は持ち上がる。それは今圧迫器でC7側を1分間を超えて圧迫して対抗作用を奪取し、それからT3、4間の圧迫を試みれば始めよりいちじるしく収縮の度が増加することがわかる。だから喘息における圧迫または打療法は、始めC7側を5分間圧迫してから打療法をおこなうときは、単にT3、4胸椎の打療よりもその効果が迅速かつ著明である。
動脈瘤における療法も極力迷走神経の張力を亢進させるため、まずT3、4間圧迫を5分間やって、それからC7側の打療を施してみると顕著な効果が得られる。しかし動脈瘤がいちじるしく拡張してしまったものにはT3、4間の圧迫は瘤の拡張反射をおこしてしまうので注意を要する。