第三 迷走神経の張力を増減する方法
ここに特記すべきは、圧迫法で脊椎突起の両側を圧迫すれば、内臓反射現象を引き起こすのと同時に、迷走神経および交感神経に対してもその張力を左右することができる。これを応用して診断および治療の目的につかうことは脊髄療法における特殊な方法である。
しかし薬物においてピロカルピンは迷走神経の張力を亢進させ、アトロピンは減弱させる。アドレナリンは交感神経を鼓舞、すなわち迷走神経の張力を減弱させる。だから圧迫法によってもこれらの薬品と同じように迷走神経に対し、もっとも簡単かつ迅速にその張力を左右することができる。そもそも脊髄神経は脊髄間孔をでてくるポイントが比較的浅く、C7にあっては2.6cm、L1では4.5cmである。いま圧迫器を用いてC7棘突起を中心として椎側を強く圧迫してみると、迷走神経の張力は強盛となり、これに反してT3、4間の両側を圧迫してみるとその張力は減弱する。