6、精神的動揺
精神的動揺の心臓におよぼす影響はわれわれが常に実感していることであるが、どんな反射現象を呈するのか研究した人は少ないようである。よく恐れおののいた人は「心臓が口から飛び出すようだ」という。じっさいエックス線でみてみると、ある方法で被験者を驚かしてみると、心臓は著しく収縮してあたかも頚部にせり上がってくるようにみえる。さらにいえばその収縮度はほかのどんな方法で刺激したときよりも顕著である。たんにエックス線を照射しただけでも神経質な人は心臓の収縮をきたすもので、ピスレー、ソーン両氏の目撃した現象はすなわち精神的動揺の心臓反射にほかならない。
いっぽう精神的動揺で心臓が収縮するのに対して、肺は拡張することを発見した。すなわち打診においては肺の清音は高調となり、心臓および肝臓の濁音範囲は減縮することが観察される。これを「肺の精神的動揺拡張反射」という。