血圧は心室および血管収縮の二つに起因するので、もし血管収縮作用を除去してしまうと、心室の働きだけを示す。
試しに亜硝酸アミールを生理的作用(顔面紅潮)がおこるまで吸入させてみると、健全な心臓であれば血圧6ないし10mmの昇騰を示すが、心筋衰弱があると反対の現象、すなわち下降を示す。
- 本症において血圧高く、亜硝酸アミールを吸入させたあと、圧が少しだけ亢上するものはまだ心筋は衰弱していない。
- 血圧高く、亜硝酸アミールを吸入して血圧が下がるものは、血管収縮神経で代償しているものである。
- 血圧が低く、亜硝酸アミール吸入後、続いて下降するものは、衰弱した血管運動神経が衰弱した心臓を代償することができなくなっているもので、予後不良。
- ジキタリス剤を用いるときは、血圧は亢進し、脈拍は減少する。しかし亜硝酸アミールを吸入させると、血圧はジキタリスを用いる前より多く下降する。このことから血管収縮神経のために昇騰しただけで、冠状動脈に影響して心筋の栄養を害する恐れがある。だからこれに対してジウレチンを配合して投じたときは、この血管収縮神経の作用を除去することで、その蓋を防ぐことができる。
[療法]
血圧亢進には血管拡張性の薬剤を用い、顔面紅潮、ついで全身に影響して拍動を感じ、呼吸数は増加、頭痛および耳鳴りがおこるようならその療を減らすか、中止すべき。人によって特異体質もあるので、注意して少量から投与すべきである。
亜硝酸アミールは、15秒間で効果があらわれ1分で消失する。
テトラニートロは、1時間で効果があらわれ5時間継続する。
ニトログリセリンは、2、3分後に効果があらわれ1時間半から3時間継続する。
亜硝酸ナトリウムは、2、3分間で効果があらわれ1時間半から3時間継続する。
ヨードカリは、持続すれば血圧下降するものである。
血圧の下降は急を要するので、薬剤の効果を待っていられないことが多い。そして迅速に効果のあるものはまた迅速に効果消失する。
血圧の高いことはときとして必要である。衰弱した心臓を代償するために血管収縮神経の働きが亢進した結果であり、このような患者には血管拡張作用にある薬剤は有害であり、心臓自体を強健にできれば自然と血圧は下降するものである。
その目的には、C7叩打はもっとも迅速で効果的である。
例)心臓衰弱で血圧240を示している患者。5分間C7叩打によって30mm下降する。10日後165mmに減って、心臓濁音界縮小し、心臓いちじるしく強健となった。いちど過度の運動と疲労のため200mmにまで昇騰したが、叩打によりふたたび165mm下降した。