(ハ)圧迫法の注意点
圧迫法における脊椎反射現象は、ほとんど瞬時に現れるものであるから、圧迫は30秒を越えてはならない。そうでないと反射機能が疲労をおこして反射現象は消失する。
一定の脊椎側を圧迫して起こる内臓反射表に準拠していろいろな症状が緩解または消失するのであるといっても、その予期した効果は正確に所定脊髄神経起根部に符合した場合であって、もし症状に変化がないときは、あやまって他の脊椎に圧迫を加えたものだと了解すること。
鎮痛作用、脊髄神経痛において脊椎の圧痛点を圧迫したときは、その疼痛を鎮静させることを得ようといっても、内臓の疾患からきた脊椎の圧痛点であったときは、圧迫法は神経痛のときのように完全には鎮痛しない、すなわち器質的疾患あるいは炎症性のものであった場合にはその鎮痛は一時的なものである。
後頭神経痛のときも脊椎側の神経起根部をさぐってみると、多くは一側において筋肉の攣縮を伴った圧痛点が見つかる。その箇所に圧迫を加えようとするには、まず頚部を伸展して項筋を弛緩させておいて指頭または圧迫器を使って強く圧迫すること。はじめは圧迫のため微痛を感じるが、しばらくしたら消失し、つづいて神経痛も緩解にいたる。そうはいっても全治を期するのであれば数回反復して圧迫法を施さなければならない。
圧迫法は健康体では皮膚の知覚にこれといって変化を見ることは少ないけれど、神経痛のときには皮膚の知覚過敏が著しく低下する。
圧迫法は適度な圧力を必要とするものであって、徐々に圧迫を加えるときは神経を鼓舞することはなく、その伝達作用に障害を与え、つづいて停止させるまでに達する。
[第16図]
脊椎圧迫による内臓反射法