◇スポンディロセラピーによる疾病治療のコツ◇
(束京、大阪42年 7 月研修会講義要約)
均整 機関誌復刻版 中巻
スポンディロセラピーとは、特定の脊髄神経を刺激することによって、治病効果をあ げる脊髄神経反射療法のことであります。この療法はオステオパシー(整筋整骨療法) におくれること18年、カイロプラクティック(脊椎骨調整療法)には15年、すなわち1910年にエブラムスが創始した療法であり、前 2 者ではラチのあかない疾病を処理するために考え出された療法だといえましょう。調整法を紹介しますと下記の 3 つに分類されております。
1 、叩打法
1 、特定の脊椎骨の線突起上にタオル 1 枚程度の布をあて、その上に馬の鞍様の金属をのせハンマーで叩打する。
2 、叩打の速度は 1 分間 90以上、時間は 5 分〜10分間である。
3、当法は内部効果器の収縮ないし拡張をはかる必要のある体異常に用いる。血管の収縮をはかるためには高速度、拡張のためには緩徐、内界臓器の収縮をはかるためには緩徐、拡張をはかるためには高速度に叩打する。
2 、圧迫法
1 、特定の脊髄神経上、すなわち特定の脊椎骨疎突起の側面部位ないし横突起聞を圧迫する。
2、当法は内界効果器の機能を高めるないし低下させる必要のある体異常に用いる。
3、圧迫の速度は、機能を高めるためには1分間に2回以上、低下をはかるためには1分間に1回以内、方法は1圧迫10秒以上30秒以内である。時間は一特定部位に5分ないし15分である。
3 、氷結法
1 、脊髄神経の特異な過敏のために生じている体異常(主に痛み、炎症、痙攣)に用いる。
2 、方法としては、特定の脊椎骨線突起の後弓部ないし横突起間に塗布する。
3 、塗布薬液は、リゴリン、エーテル、クロールエチール、ベンジン等である。
以上はスポンディロセラピーの調整方法の要約でありますが、今から50年以上前のエブラムス時代の調整法がそのまま現代に通用するものではありません。したがって、 スポンディロセラピーは年々衰微の道をたどり、ようやく日本において特定の指圧業者、 野口整体などで方法のかわった反射法として用いられている状態であります。エブラムスの着服はすぐれたものでありましたが、調整方法に進歩が認められませんので衰退したものと思われます。すなわち、一部位に5分ないし15分間も刺激時間がかかったのでは実用化に添うたものといえないからでしょう。したがって調整方法について改善の適を得ればすばらしい臨床効果を期することができるものだといえます。
ここでは具体的な方法は示しませんが、左の事項を考慮にいれて調整の方法を考えれば、スポンデロテラピーの真価を発揮することができるはずであります。
普通健康体においては、刺激された神経は興奮を示し、同量度の継続刺激によってその興奮は上昇し、ある段階に至って興奮状態を持続する平坦期にはいり、平坦期における刺激の様式によって効果期に突入ののち消退期に入ります。すなわち、神経は 手技調整刺激に対して興奮期一平坦期ー効果期ー消退期の 4 段階の生理作用を示すわ けであります。
これを手技調整上、理解しやすく述べますと次のような刺激反応を示すわけであり へ ます。
1 、興奮期
神経は 6 秒ないし 15秒経過の刺激より興奮状態を示し上昇していく。興奮による分泌は興奮期に突入した10秒ないし15秒の聞にみられ、そのまま興奮は上昇していき、ある段階まで達します。この状態を興奮期といいます。
2 、平坦期
ある段階に達した興奮作用を持続している状態で、刺激をうけることが非常に気持のよい時期であります。普通 5分間程度で効果期にはいります。ただし刺激の様式により平坦期の持続時間は左右されます。手技調整の上手、下手はこの期の刺激法のコントロールによって決定されるわけであります。たとえば機能作用を高めたり、低くしたりするのも平坦期のコントロールしだいで決定します。
3 、効果期
調整刺激の目的を達した最高時点であります。正常体では 1分間に 3〜5 回、 0.8秒ないし 1.6秒の自律興奮が効果器にみられます。
4 、消退期
調整刺激の目的が逮せられ、神経が興奮の最高時点をへて安定するところまで下降 し、正常の機能を営む段階に入る状態であります。
このように神経は刺激に対して基本的な4段階の生理状態を示します。しかしこれは普通健康体といわれている生体何すもので、異常体の場合はおのずから違ったものになります。しかし麻痺や痙攣(痛)状態にあるものは別ですが、異常体であっても調整刺激を2回加えると、次の刺激から健康体なみに反応を示すようになります。 このことは手技刺激を生業としているわれわれにとっていちばん大切な神経生理であります。 以上申し述べた事項を勘案して翻訳転載の下記に適用すれば、エブラムスの期待に添うことができましょう。なお協会員は手持ちの類別克復法に適用すれば答えは体がだしてくれます。
以上『均整 機関誌復刻版 中巻』より