Afina現代語訳83、大動脈瘤の臨床例(7)
第7例 伊◯某女 49歳 生まれつき体質は弱かったが、これといった大病はしたことがない。本年6月、狭心症の発作をおこし、数週でどうにか穏やかさを取り戻していたが、8月に入って再発し、それ以来しだいに増悪し、ついに一日数回の発作をおこすまでに進行している。その症状と言ったら全身がふるえ、心窩苦悶、心悸亢進、四肢厥冷、喉頭部に息苦しさを感じている。とくに嚥下のときに呼吸困難を増し、食事を控えざるをえないところまできていた。このような症状でヒステリーとして治療を施されていたが、長いことたっても軽快する兆しが見え ...
Afina現代語訳82、大動脈瘤の臨床例(6)
第6例 柴◯某 45歳 生まれつき強健な活動家であったが、一昨年前頃から窒息感や呼吸困難を感じ、ちょっとの旅行にも疲労してしまい数日の休養を必要とするようになった。以来、日を追うごとに増悪し、頭重、眩暈、胃部の違和感をおぼえるようになった。そして胸部および肩甲間部に疼痛や牽引されるような感じがある。左半身の皮膚知覚は鈍麻し、左上肢は挙上してしばらくすると麻痺し、さらに激烈な腰痛を訴え、極度な神経衰弱をおこしており、新聞も読み続けられないし、囲碁も絶対にできないというような状態になってしまった。 現症。心臓 ...
Afina現代語訳81、大動脈瘤の臨床例(5)
第5例 安◯某女 47歳 数年前から胃に発作性の痙攣があり、つねに注射で治しているという。ところが最近、その発作がひどくなってきており全身の栄養状態もしだいに衰え、ついに癌ではないかと疑われ川井氏X線部でその真偽を診察してもらってきた。すると意外にも胸部に大動脈瘤がみつかり、胃の症状もこれのせいだろうと当院を紹介された。 はじめX線室において診断を受けるときも患者は衰弱しているため目眩をおこすので瞬間的な照射のみで検査したらしい。 現症。胸部の打診や聴診では異常は認められない。心窩部において胃の部分に抵 ...
Afina現代語訳80、大動脈瘤の臨床例(4)
第4例 小◯山某 57歳 もともと強健。一年前から左季肋部に疼痛を感じている。胃の症状を訴える。右側の下肢に間歇性跛行に類する歩行障害がある。胃腸の疾患として某病院に入院しずっと治療を受けていたが、しだいに衰弱してきて安心していられなかった。ついに5月上旬順天堂においてX線検査により胸部大動脈瘤であることがわかり、この治療を受けるべく当院に来院した。 現症。立位での胸部の打診、聴診では異常はないが、臥位では左R2において著明な雑音が聞こえる。心窩部左、腹直筋に抵抗つよく、やや膨隆した部分がみとめられる。表 ...
Afina現代語訳79、大動脈瘤の臨床例(3)
第3例 吉◯某 49歳 既往症、23年前に梅毒にかかり一昨年の10月頃はじめて胸部に違和感をおぼえ、ときどき鈍痛がある。動脈瘤であるとの診断を受ける。局部に注射療法を受けたけれども効果なく、むなしく退院。寿命は天に任せるよりないということになっていた。 現症状。自覚症として右胸部の前後および右手に波及する疼痛があって、右の肩甲部にはとくに圧痛があって、枕をその間に挟まないと仰向けに寝ることもできない。歩行に際しては胸部苦悶、呼吸困難および疼痛のため、脚を前に出す勇気も出ないと訴える。 視診では右胸R3以下 ...
Afina現代語訳78、大動脈瘤の臨床例(2)
第2例 高◯某 49歳 生まれつき健康で,、少しお酒をたしなむこと以外はほかに問題とするところもない。ただ27歳のときに脚気を患ったことがある。ワッセルマン氏反応陰性。 主訴は、数年前から両肩から上腕部にわたって発作的牽引性疼痛があって、頚まで痛くなったときには喘息発作をおこすという。そして同側の頚部にいちじるしい知覚過敏があって、自分でそこをおさえれば喘息発作が鎮静することに気がついている。なおその発作は本人が好きな謡曲を演じることでいつでも誘発できるらしい。 X線所見は胸部大動脈瘤であり、謡曲によっ ...
Afina現代語訳76、大動脈瘤のエブラム療法
エブラム氏療法 エブラムは脊髄の大動脈収縮反射中枢を刺激するために、C7の棘突起またはその両側の打療で対応した。動脈瘤のいちじるしい収縮によっておきた症状を速やかに消散する方法を発見し、1911年、40例をイギリスの医学雑誌に発表して大きな注目を浴びた。それ以来、各国から報告された症例は非常に多く、いまや胸部大動脈瘤に対して有効な唯一の治療法とされている。しかし、なかには効果がないという非難の声もあったけれども、これらは痕になって術者の未熟、または不適当な器械を用いていたことがわかっている。 打療の効果に ...
Afina現代語訳77、大動脈瘤の臨床例(1)
第1例 西◯某 61歳 東京 生まれてこのかた、これといった疾患に悩まされたこともなく強健で、酒もたしなまず、しかも梅毒の徴候なし。しかし20年近く喘息に苦しみ、、今年三月頃から、少し運動しただけで背部から胸部にわたって緊引性の疼痛を感じている。咳嗽は痙攣性であたかも疫咳のようである。 現症状 頚部右側の静脈および胸部の上半分、とくに右側において表在静脈がいちじるしく怒張し、発作が増悪すると怒張はいっそうひどくなって、窒息しそうだと訴える。 打診では、胸部より左右に濁音が聞き取れる部分が広く約7cmにわ ...
Afina現代語訳74、大動脈瘤
大動脈瘤は臨床上、徴候を示すものとそうでないものがある。たとえ徴候がみられたとしても動脈瘤によるものかどうかはわからない。大動脈反射喚起法によってその徴候が消失するかどうかを待ってはじめて確定することが多い。大動脈瘤は予想に反して珍しいものではない。これによって死亡するものはエメリッヒによると全死亡率の0.6%、ミュリエルによると1.49%であるとのことである。 動脈瘤の好発部位は、その3/4は大動脈であり、95%は胸部で占められ、そのうち90%が嚢状瘤腫である。80〜90%は男性、年齢は30〜50歳の間 ...
Afina現代語訳73、大動脈反射現象の生理
クロード・ベルナールの血管運動神経の研究のよれば、ウサギの頚部における交感神経を切断すると、同側の耳の血管が拡張する。しかしその末梢を刺激すると耳は蒼白となる。いま試みに熟練した医師が指頭で脊椎を強圧すると、一定の脊椎にいたれば血管の収縮または拡張するポイントを発見することだろう。収縮現象はすぐに現れ、拡張現象は持続的圧迫によって現れる。 その中枢は延髄にある。そこから脊髄にはいって前根に出る。これらの繊維は血管の大きさを左右するものであり、持続性の刺激は血管の張力を保持する。 大動脈拡張反射は、血管拡張 ...